でらぁのーと

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ホノルルマラソン日記(3)〜走ることについて語るときに私の語ること〜

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エッセイ風記事の試み、ホノルルマラソン日記の最終記事です。
前の記事はこちら。
 
 
 
本記事は、レース当日のハーフ通過後から、レース後のハワイ滞在までです。
 
 

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ハーフ通過

26、27キロあたりが折り返し。ハーフを過ぎてから、徐々に折り返してくる人が増えてきているが、一向に折返し地点が見えない。「もうすぐ折返しか」と思ってからが長い。30キロまでは走ったことある距離のはずなのに、やっぱり毎週末走っていたハーフの距離を超えてきていることを思うと、少しずつ疲れが見えているのか。
 

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気づけば、太陽が上にある。そりゃそうだ。7時半を過ぎている。太陽が完全に昇ったのはいつからだっただろうか。気づいた途端、ギラギラと照りつける太陽を皮膚に感じ始める。
27キロ辺り。Uターンの折返しポイントはないので、結局折返しはわからないまま、頭がややぼーっとしてきた。「これが、集中力が欠けてくると聞いていた現象か」と頭の中でつぶやく。日本で30キロ走を3回ほどやってみた際はラストスパートもかけられていたし、こんな風にぼーっとなることもなかったので、暑さのせいか、それとも、調子よく走りすぎたつけがそろそろきたのか。次のエネルギーが欲しいような気がしてくる。
 
とはいえ、3つしか補給を持っていないので、次がラストだ。予定では、30キロ過ぎくらいで補給したいと思っていたところだが、1時間に1つと思うと確かに補給してもよい時間。最後の補給は、集中力アップにも効くはずのカフェイン入りで、味が濃いshotzだ。補給後すぐに水がほしいところなので、次の給水地点のタイミングにしようと決意。ウエストポーチから最後の1つを取り出して、shotzを片手に持った。
 
そして、補給食の代わりに、もう何度もフリーズして役立たずのスマホをついにウエストポーチにしまい込む。汗と補給食で手がベタベタで、画面を触っても反応が悪い。もはやスマホはただの荷物と化してしまった。日本が夏ときは、私はまだハーフ距離までしか走れていなかったから、この状況を予測できていなかったのか。スマホを入れたウエスポーチがボンボンと揺れる。スマホをウエストポーチに入れて走る練習はしていなかったけどしょうがない。ウエストポーチを回して、少しでも揺れの衝撃が少ない場所を探す。もうこのあとは時間も見にくくなるけれど、勝手に見つけた私のペースメーカーの何人かと、自分の感覚を頼りに、なんとか走り切るのみだと覚悟を決める。
 
28キロの旗と、給水所が見える。「今だ」と思い、最後の補給ジェルを開け、口の中に絞り出す。ベトベトするが、ゴミをウエストポーチにしまい込み、水を受け取り体にエネルギー源を流し込んだ。しかし、まだ体は塩分も欲しているようで、給水所の一番奥の端でゲータレートも再度受け取り飲み干した。飲み干したけれど、まだ濃い味の飲み物が欲しいと感じている。今までの給水所では、水とゲータレートを交互に受け取り、数口分だけ飲んでいたけど、このあとはずっとゲータレートを飲み干すことになるんだろう。ここからが自分との戦いの始まりであることを体が理解しているようだ。
 
友人の写真より。すぐそこに海が見える。
 
気づくと、往路のランナーの人混みが見える。ハイウェイに戻ってきていた。復路はだいぶ走りやすい状態になったようだが、往路は混み合っている。オレンジのゼッケンがたくさん見える。体は車線の左の壁の陰の下に置きつつ、一緒に来た友人はいるだろうかと目で追いながら走る。混みすぎて見つかる気がしない。GoPro片手に動画を撮りながら走る人、コスプレをしている人、いろんな人が見える。私のペースメーカーは団体さんだったようで、往路の仲間に声をかけながら走っていた。それを見て、友人が見つからない私も、黙々と走りつつ、元気をもらう。
 
 
 

30キロ通過

やっと30キロの旗を通過。ここからは私にとって未踏の領域だ。ここからが苦しいと、よく言われるところ。私も、すでに足の付根に疲れを感じる。30キロまでは余裕でいる予定だったのに、やっぱり最初のペースが速すぎたから、いつも使っていない筋肉も使ってしまっているようだ。けれど、スマホを一瞬だけ取り出して時計を見ると、今はスタート地点を通過してから3時間20分くらいのはず。あと12.195キロ。
少しずつ体にきているので、自分を鼓舞する言葉をかけてみる。
「残りは皇居2周ちょっと分か。10キロちょっとなんですぐじゃないか。」
「今より多少ペースが落ちても、目標だった6:40で走れたら、4時間半を切るペース。あわよくば、4時間半も切れるか?切りたい、切ろう」
ここまでは快走できていた分、目標に対して貯金ができている状態を認識し、目標の5時間よりも上を狙いたい欲求が出る。確実に5時間の目標を切ってやる。このまま走りきりたい。
 
31、32、33…1キロが異様に長く感じてくる。次の「キロ」の距離表示の旗がなかなか現れない。今まで気にしていなかった「マイル」の距離表示の旗も目に留めるようになる 。キロへ変換するための正確な数字は覚えていないけれど、ざっくり計算して、少しずつ、進んでいることに小さな達成感を積み重ねる。しかし、だんだん脚が上がらなくなっている。ペースが落ちてそうだと感じ、もう少し脚を前に出すことを意識して走ってみる。ペースメーカーになんとか食らいついていかねば。
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 友人の写真より。後半の自分の写真がなさすぎる。

35キロ通過

35キロ辺り。往路では気にしていなかったハイウェイ入り口付近は、こんな坂道だったのか。上り坂が体に堪える。なんとか脚の力で前に進む。それでも、まだ大きくはペースは落ちていないはず。

 

ハイウェイが終わると、道が住宅街に入っていく。暑さが心を蝕んでくる。太陽がジリジリしているが、陰が少なくなってしまった。自分の帽子の陰に少しでも顔が収まるように、少し下向きに走ろうとすると、顔を下に見けた途端、頭がクラっとしている自分に気づく。これはまずい。エネルギーが足りていない。エネルギーがほしい。しかし、もう補給食はない。あぁ。
エネルギーにはならないけれど、塩飴はまだあるはず。塩分を補給。喉も渇く。給水所、早くこい。
 
ホースで水をかけてくれる応援の方を見つけて、水の中に飛び込んでいく。その後は給水所のスポンジも、頭の上と首筋に絞って、全身にかぶるようにした。
たまに現れる木の陰で、涼しい空気を全身で吸い込む。少しでも、体が楽になっているのを感じられるように。実際、ほんの少しの陰でも、陰の下は走りやすい。太陽のエネルギーのパワーを改めて実感する。今は、そんなに頑張ってくれなくてもいいけれど。
 
 
 

38キロ通過:地獄の坂道

38キロ付近。40キロ辺りまで、2キロ弱続く上り坂。長いし、角度も急に感じる。聞いてはいたけど、ここに来ての上り坂はキツイ。ほんとにキツイ。歩いている人も多々見かける。みんな、きついよな、ここ。
なんとかペースを落とさずに進みたいのに、明らかにペースが落ちていく。ペースを戻したいけれど、脚が上がらない。どこまで落ちているのか、正確なペースはもうわからないけれど、ペースメーカーにしていた何人かが、少しずつ前に離れていく。なんとか食らいつきたい。追いつきたいけれど、やっぱり脚が上がらない。脚の付け根だけでなく、前腿にもきている。苦しい。ペースを落としたくないのに、ついに、足を引きずって歩いている人にさえ少しずつしか追いつけないくらいのスピードになってしまった。
先に行った私のペースメーカーの方のうち、給水所で軽く毎回休憩をとっている人もおり、コツコツペースを変えずになんとか走り続けている私は、給水場で追いつき、また離され、次の給水でまた追いつく、の繰り返し。歩いたり、ストレッチをする人も増えてきて、少しずつ、先程までの集団がばらけていく。
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 ホノルルマラソン公式ページより。最後の尖りが「地獄の坂道」。
 
けれど、今のところ、止まらず来ている。歩かずゴールする目標はなんとか達成したい。このまま走り続ければゴールは来る。こんなところで負けられない。
あと5キロくらい。あれ、30キロ地点で皇居2周ちょっとと思ったのにまだあと1周あるのか。ほとんど進んでいない気がする。
 
坂道の間に、4時間半の公式ペースランナーとそれに着いて走るランナー集団に抜かれる。自分は気持ちよく同じペースでゴールできるのではと、35キロ辺りまではまだ信じていたのに。ここで一気に抜かれ、4時間半を切れるかもという淡い期待と共に、ペースランナーが離れていく。これが、もっと練習している人の走りか。ここに来て、ペースを変えないためには、もっと練習が必要だったんだな。エネルギーと、脚の筋肉が足りない。
それでも、ここまで私は、4時間半ランナーより速いペースで来ていたんだ、と改めて。苦しいので、なんとか自分を褒めながら、前に進む気力だけを保っていく。
 
ようやく、上り坂が終わり、下りに入る。Qちゃんこと、高橋尚子選手が、いつぞや「坂道はコロコロおにぎりが転がるつもりで」と言っていた言葉を思い出し、自分がおにぎりであるとイメージして脚を転がす。実際にはほとんど脚は出ておらず、かなりもつれそうな転がり方だけど、上り坂で折れそうになった気持ちを取り戻そうとする。しかし、ここまでと、先程の坂道でやられた脚はなかなか言うことを聞いてくれない。
 
 

40キロ通過

少しずつ、前に歩を進め、40キロ地点を過ぎる。あと、2.195キロ。ラストスパートをかけたい。が、今のコンディションで2キロのスパートがもつだろうか。練習の際のラストスパートの5:00弱までは上がらないにしても、残ったエネルギーはここで使うためのものだ。ペースを上げようとしてみる。元のスピードにすら戻ってもいない気もするが、とにかくできる限り前へ。あと、2キロ、たった2キロだ。
 
ダイヤモンドヘッドに差し掛かる。往路で朝焼けを見た場所。今は太陽に照らされた海の底の色も現れ、青のグラデーションとともにキラキラと輝いている。高い場所から見下ろす海の青さの美しいこと。これはまさに写真スポットだけど、写真を撮る余裕はない。スマホを出したいが、エネルギー不足の今、取り出す余分なエネルギーが見つからない。この景色、目に焼き付けておこうと思い、なんとか顔の向きだけ海に向けようとするが、体が固まっているかのように、それすらなかなか動かないので、海を目で追う。

友人の写真より。海の青さに惹きつけられる。
 
坂道を下りきった辺りで、41キロの旗が見える。もうあと1キロ強だ。なんとかラスト1キロはスピードを上げたい。必死になって足の蹴りを強める。どこまで強まっているかはわからないが、とにかく強めようとする。精一杯の、ラストスパート。ここで出しきらないと後悔する。
 
ゴールが見えてきている。近いようで、なかなか近づかない。けれど、これがラストなのだ。5時間は確実に切りたい。もう時間もスピードもしばらく分からない状態になっているが、坂道で落ちたスピードはどこまで響いているだろうか。4時間半の公式ペースメーカーの人はもうとっくにゴールしている。
ゴールに、タイムが表示されているのが見える。「4時間53分」の表示。スタート地点を通過したのが5分ほど経過してからだったので、ラップタイムはまだギリギリ4時間40分代のはず。なんとか4時間50分を切ろう。
僅かに残った全力を振り絞る。なんとか、膝を前に出すんだ、地面を蹴るんだ、わたし!

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ゴール直前の直線。ゴールが見えてからも長く感じた。 

 

 

 

完走!

そして、 ゴールライン
両腕をなんとか少し上げて、ゴールの下をくぐる。
くぐった瞬間、全身の力が抜けて、前に倒れ込みそうになる。膝に手を当ててなんとか上半身を支えるが、下を向いた途端、頭がくらくらする。そうだ、私、エネルギーがもうないんだ。こんなゴール直後で止まっては、次のランナーの迷惑になるので、なんとか前に進みたいが、とりあえずしゃがみこまないことで精一杯で、動けなかった。
 
しばらく、なんとか大きな呼吸を繰り返し、体に酸素を送り込む。5回ほど呼吸をしてから、やっと動けるようになったので、頭を上げる。一旦止まって重みが増した脚を動かすと、脚の付け根と太腿、膝が痛む。脚を引きずりながら、フィニッシャーメダルを受け取り、道なりに、緑の芝生の方へと進んでいく。
 
相方を発見。スポーツドリンクを持って待機してくれていた。そうだ、ずっと喉が乾いていて、もっと飲みたいと思っていたんだ。1リットルのペットボトルに入ったゲータレートをあっという間に飲み干し、相方と共に人の流れに沿ってさらに移動する。サブ3でゴールした友人も待ってくれていて、ゴール後の状態の記念撮影。ありがとう。
 
立っていることに疲労を感じ、膝の痛みのためにぎこちない動きでしゃがみ込みながら、樹の下でごろんと横になると、もう動けなくなった。泥がつくが、気にしていられない。脚が、おかしくなりそうだ。風に揺れる緑が涼しく、緑を眺めながら、なんとか靴を脱いで、全身の力を抜いた。とにかく、フルマラソンを走りきったんだ。
 
しばらく横になり、全身を休める。少し動けるようになってきたら、木の幹に脚を任せて乳酸を流したり軽くストレッチをしてみると、少しずつ全身の感覚が戻ってきた。
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寝転んだ泥の上に見えた、緑、木漏れ日、根っこのような幹。私の好きな景色。 
 
先にゴールで待ってくれていた相方と友人が使っていたという、「ライブトラッキング」で後ろにいる友人の位置を確認し、脚を引きずりながら、ゴール付近に応援に向った。
自分のラップタイムもようやく確認できた。最後の坂道の遅さに驚き、最後のラストスパートは全然スパートできていなかったと分かる。しかし、これが私の今の全力だ。
 

ライブトラッキング上の、私の通過タイム。
 
友人の動きを追う。トラッキングが途中で止まる友人もいて、今辛い坂を上っているんだろうと想像しながら、応援の念を送って待った。次々に現れる友人は、少なくともゴール付近では快走しているように見え、頼もしかった。自分がきつかったラストスパートを思い出し、自分がもらった声援に感謝しながら、声援を送る。
 
全員がゴールをして、しばし休んだ後は、ゴール付近にたくさん出ているテントを一通り見て回った。揚げパンやドリンク、Tシャツを配ってくれている。フィニッシャーズTシャツを受け取り、SATOのスプレーを脚にかけてもらった。旅行会社のツアーを使ってホノルルマラソンを申し込んだ人は、各ツアー会社が荷物を預かってくれていたり、特別な休憩所があったりするようだったが、我々は個人申込なので入ることはできず。
あまり元気に動ける状態でもないので、少しだけ見て、近くのバス停からバスに乗ってホテルに向って帰った。
 
夜、再度みんなで、海の見えるシーフードレストランに集合。1日のこと、練習のこと等々を語り合った。気持ち良いディナーだった。

レストラン「Chart House Waikiki」から眺める夕焼け。 
 
夜は疲れ果てて泥のように眠り、長い1日が終わった。
 
 
 
以上、エッセイ風終了。
書いといて、長かった。ホノルルマラソンの振り返りでした。
 
 
 

レース後(ホノルル4日目以降:2019/12/9(月)〜)

ここは、おまけ程度にやったことだけ。
 
・ダイビング
・ハワイのグルメ巡り
・海に沈む夕陽を眺める
・ドライブ
・ビーチで遊ぶ
・ドローンで遊ぶ
・「この〜木なんの木」のモンキーポッドの下でお昼寝
etc...
 
 
ダイヤモンドヘッドは登れなかったし、ノースショアは行けなかったし、沈船は見逃したし、他の島にも行ってみたいし、また来よう、ハワイ。
 
 
以上でした。
この長文を最後まで読んでくださったあなた、本当にありがとうございました。
お疲れさまでした。
 
 
 
 
ホノルルマラソンに出てみたいなと思った方、私のオススメグッズはこちらにまとめておりますので参考になれば。dera-note.hatenablog.com

 

 もっと味のある、本物の「走ることについて語るときに語ること」を読みたいのであるという方は、本記事のきっかけになった、村上春樹さんの本をどうぞ。